「ワクチンって本当に必要?」「副反応がこわくて、まだ受けさせていない」
子どもの予防接種をめぐって、そんな迷いや不安を抱えている方は少なくありません。
体に直接関わることだからこそ、慎重になるのは当然のことです。SNSや口コミなど、さまざまな情報が飛び交う中で、「打たない」という選択を考えている方もいるでしょう。
しかし、予防接種を受けないことで、実は子どもが大きなリスクにさらされてしまうことをご存じでしょうか?感染症の中には、命を脅かすものや、重い後遺症が残るものもあります。
今回は、「子どもの予防接種を受けないとどうなるのか?」わかりやすく解説します。
■子どもの予防接種、やらない選択の影響
予防接種を受けないという選択は、親として慎重な判断をしたいという思いから生まれるものです。ここでは、自然感染との違いや、ワクチンがなぜ必要なのかを見ていきましょう。
◎自然感染で免疫をつけるのは危険?
「病気にかかって免疫をつけたほうが強くなる」という考え方がありますが、重症化や後遺症のリスクがある感染症については、自然感染を待つのは実は危険です。
たとえば、麻しん(はしか)は一度かかると一生免疫がつくとされますが、同時に高熱や脳炎を引き起こし、命を落とすこともあります。おたふくかぜでは難聴や不妊の原因になることもあるのです。
◎今の日本で感染症が少ないのは、ワクチンのおかげ
現在、破傷風や百日せき、ジフテリアなどの感染症を日本でほとんど見かけないのは、予防接種の普及が要因のひとつです。しかし、接種率が下がればすぐに流行が再燃します。
実際、2007年には大学生を中心に麻しんが流行し、複数の大学が休校に追い込まれました。「今は少ないから打たなくていい」と考えるのは、非常に危うい誤解です。
◎VPD(ワクチンで防げる病気)とは何か
VPDとは、「Vaccine Preventable Diseases(ワクチンで防げる病気)」の略称です。B型肝炎、肺炎球菌感染症、ヒブ感染症、麻しん、風しん、水痘(みずぼうそう)などが代表的です。ワクチンは「子どもの命を守るための安全な盾」にもなるのです。
■打たなかったことで「こんなはずじゃ…」が起きる理由
感染症は一度かかると長引くことも多く、家庭や仕事にも大きな影響を及ぼします。ここでは、具体的な生活へのリスクを見てみましょう。
◎学校・保育園に行けない日々が続くことも
感染症にかかると、治るまで登園や登校ができません。場合によっては入院が必要になることもあります。保護者様は看病のために仕事を休まなければいけなかったり、経済的にも負担が増えてしまう場合も。家庭内の生活リズムも乱れ、子ども自身も社会的なつながりを失う期間が生じてしまうのです。
◎兄弟や家族にもうつるリスクも、意外と高い
子どもが感染症にかかると、家族にもうつる危険があります。とくに風しんは、妊婦が感染すると赤ちゃんに「先天性風しん症候群」を引き起こすおそれがあります。
家族全員が安心して過ごすためにも、子どもだけでなく家庭全体で予防接種への理解を深めることが大切です。
◎ワクチンで守られるのはあなたの子どもだけではない
ワクチン接種は「自分を守るため」だけではありません。免疫を持つ人が増えることで、ワクチンを打てない乳児や妊婦、高齢者などを守ることにつながります。地域社会全体で感染症を抑える「集団免疫」は、まさに“みんなで命を守る仕組み”なのです。
■ワクチンを受けないリスクは「副反応」高い?
接種後に赤く腫れたり軽い発熱が出ることがありますが、それは免疫が作られている証拠でもあります。一方で、予防接種をしないまま感染すると、命に関わる合併症を引き起こす危険もぐっと高まります。
◎「副反応が心配」は自然な感情。でも過剰な心配は不要かも?
ワクチン後の反応は、ほとんどが一時的で軽いものです。重大な副反応、例えばアナフィラキシーショックなどは10万回に1回程度とされており、自然感染による重症化リスクに比べれば、低い確率です。
◎数字で見ると、副反応よりも“打たないリスク”が大きい理由
ヒブ感染症や肺炎球菌感染症では、ワクチン導入後に小児の髄膜炎が大幅に減少しました。反対に、ワクチンを受けていない子どもが重症化したケースも少なくありません。
※厚生労働省|ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンQ&A
■予防接種を受けないことは「もったいない」
ワクチンは、病気を治す薬ではなく「発病を防ぐ力」を与えるものです。ここでは、受けないことの“もったいなさ”をもう一度見つめます。
◎ワクチンで防げる病気はごく一部しかない
地球上には数え切れないほどの感染症があります。マラリアやデング熱のように、ワクチンが未開発の病気もまだ多いのです。だからこそ、「防げる病気を防ぐ」ことが重要になります。ワクチンは、限られた貴重な“備え”なのです。
◎「周りが打ってるから平気」ではない
集団免疫が成り立つためには、一定以上の接種率が必要です。誰かが「打たない」選択をすれば、その分感染のリスクが高まります。麻しんのように感染力が非常に強い病気では、わずか数人の未接種者から流行が広がることもあります。
◎世界と比べて日本のワクチン接種率が低い理由
日本は医療技術が高い国ですが、ワクチン制度は欧米に比べて遅れているといわれます。任意接種の費用負担が重いことや、情報不足による誤解がその背景にあります。
■費用がかかる? 実は「打たない方が高くつく」かも
「ワクチンは高い」と思う方もいますが、実際に病気にかかるともっと大きな出費になります。治療費だけでなく、通院や看病のための休職・交通費・精神的な負担など、目に見えないコストも大きいのです。
◎定期接種と任意接種の違い
定期接種は公費(無料)で受けられるワクチンで、自治体がスケジュールを定めています。一方、任意接種は自己負担が必要ですが、感染リスクを考えると費用対効果は高いと考えられます。命を守るための投資として考えることが大切です。
◎病気にかかった場合の経済的負担
病気になると、通院費・薬代・交通費など直接の出費がかかるほか、看病のために保護者様が仕事を休むことで収入が減ってしまうこともあるでしょう。場合によっては、長期入院や後遺症によるリハビリでさらに費用がかさむこともあります。
■ワクチンで防げる病気について、可能な限り“後悔”を減らす
予防接種をためらう理由の多くは、「副反応がこわい」「本当に必要なのか分からない」といった“情報の不足”です。しかし、厚生労働省や小児科学会のデータを見ると、ワクチンで防げる病気(VPD)は今でも毎年多くの子どもに影響を与えています。
子どもの体に関わることだからこそ、慎重になるのは当然のことです。インターネット上の情報には誤りも多いため、迷っている場合はお気軽にご相談ください。