
健診結果の封筒を開けたまま、動けずにいる40代の方へ
血圧や脂質が去年より動き、再検査を勧められた。それでも仕事や家庭に追われ、対策は後回しになりがちです。本記事では40代で数値が変わりやすい背景と、極端な制限に頼らず続けられる食事・運動・睡眠の工夫、内科へ相談する目安を整理します。
この記事の要点まとめ
- 40代は基礎代謝低下と生活負荷が重なり、健診数値が変化しやすい時期とされています
- 食事の選び方や隙間時間の運動、睡眠の整え方など無理なく続けられる工夫を紹介
- 要再検査の通知や数値の継続的な変化がある場合は、内科への相談が目安になります
40代で健診数値が悪化しやすい理由と放置によるリスク

基礎代謝の低下と生活負荷が重なる40代の身体変化
食べる量は30代までと変わらないのに、腹囲だけがじわじわ増えていく。この違和感の背景として挙げられるのが、加齢に伴う筋肉量の減少と基礎代謝の低下です。使われにくくなったエネルギーは内臓脂肪として蓄えられやすく、中性脂肪やLDLコレステロールの値、血糖の処理にも関わると考えられています1。
加えて40代は、責任ある立場、会食の増加、通勤以外ほとんど歩かない毎日が重なりやすい時期でもあります。メタボリックシンドロームは腹囲に加え、血圧・血糖・脂質のうち複数が基準を外れた状態を指します1。ひとつの数値だけで一喜一憂せず、組み合わせで眺める視点を持っておきたいところ。ホルモン環境の変化も、男女ともに数値の振れ幅に関わるとされています。
「要経過観察」を見逃すことで進行する動脈硬化への注意点
血圧や脂質の異常は、初期にはほとんど自覚症状が出ないと言われます。痛みも息切れもないため「まだ大丈夫」と思ってしまいますが、高い値が続く間、血管の壁は静かに負担を受け続けます。この状態が長引くと動脈硬化が進み、心疾患や脳血管疾患といった重い病気の背景要因になり得ることが知られています13。
「要経過観察」は、そのままでよいというサインではなく、生活を見直す時期に入ったという知らせ。症状のない段階から手を打てることが、40代という年代の強みです。前年の結果と並べ、上がり続けている項目がないか確かめてみてください。
慢性的なストレスが交感神経を刺激して数値を押し上げる仕組み
見落とされやすいのがストレスの影響です。締切や人間関係の緊張が続くと交感神経が優位な時間が長引き、血圧は上がりやすくなるとされています。睡眠が削られれば食欲に関わるホルモンのバランスも乱れ、夜の間食や飲酒量の増加につながることも1。
当院の院長も、痛みや不調を「まだ我慢できる」と後回しにされてきた患者様を数多く拝見してきました。忙しさの中で自分の身体を最後に回す姿勢は、数値の変化にも同じように表れます。休息を確保するのは怠けではなく、予防の一部と捉えていただければと思います。
忙しくても続けられる生活習慣病予防の3つの実践アプローチ

外食やコンビニでもできる「選び方と食べる順番」の工夫
自炊の時間が取れなくても、選び方を変えるだけで中身は整えられます。コンビニなら、おにぎり1個にサラダや海藻の小鉢、ゆで卵かサラダチキンを添える形が現実的でしょう。麺類は汁を残すだけでも塩分を抑えやすくなります。食物繊維やたんぱく質を先に、主食を後にという順番は、食後の血糖の急な上昇をゆるやかにする工夫として広く紹介されています1。
減塩は、味を我慢するより「かける調味料を減らし、香辛料や酸味で補う」方が長続きしやすいもの。日本人の食塩摂取量は目標値を上回る傾向があるため、まずは汁物を1日1杯までにするなど、決めやすい一点から13。
通勤やデスクワークの合間に取り入れる隙間時間のエクササイズ
ジムに通う余裕がないなら、生活の中に運動を混ぜ込む発想へ切り替えます。厚生労働省の指針では、成人に対して息が弾む程度の中強度の身体活動を日常的に確保することが推奨されています1。30分をまとめて捻出しなくても、10分×3回で積み上がります。
- 階段を使う:3階までは階段、という自分ルールを1つ決める
- 座ったまま行うかかと上げ:デスクで20回、ふくらはぎの動きを促す
- 昼休みの早歩き:外食先まで少し遠回りする
膝や腰に不安のある方は、痛みが出ない範囲にとどめること。無理をしないことが継続の条件です。
就寝前のひと工夫で睡眠の質を高め自律神経を整える習慣
睡眠は、食事や運動と並ぶ予防の柱。就寝の1〜2時間前にぬるめの湯船につかると、体温が下がる流れに沿って入眠しやすくなるとされます。寝床でのスマートフォン操作は光と情報が覚醒を促すため、枕元から少し離す配置にするだけでも違いが感じられるかもしれません1。
寝酒は入眠を助けるように感じても、夜間の睡眠を浅くする方向に働くと指摘されています。まず取り組むなら、起床時刻を毎日そろえることが負担の少ない一手です。休日の寝だめよりも、平日との差を2時間以内に収めた方が体内リズムは整いやすいと考えられています。血圧や体重をスマートウォッチやアプリで記録し、変化を目で追えるようにしておくのも継続の支えになります。
生活習慣の改善で陥りがちな誤解と注意すべき落とし穴
過度な糖質制限や激しい運動が身体の負担になるケース
数値を指摘された直後は、極端な方法に走りたくなるものです。ただ、主食をほぼ抜くような制限は続けにくく、反動も出やすいもの。体重が戻る過程で、かえって数値が乱れることもあります。短期間の劇的な変化を狙うより、半年から1年かけて維持できる形に整える方が現実的です1。
運動も同じで、長く身体を動かしていなかった方が突然全力で走れば、膝や腰、心臓に大きな負担がかかります。血圧が高い状態で高強度の運動を始めるときは、事前に医師へご相談ください3。
サプリメントや特定食品に依存しすぎるアプローチの限界
「これを飲めば数値が下がる」という情報は目に入りやすいものですが、サプリメントの位置づけは食事の補助にとどまります。特定の成分だけで生活習慣病の予防が完結するわけではなく、土台になるのは日々の食事全体の組み立て、身体活動量、睡眠、そして飲酒や喫煙の見直しです13。
常用薬がある方は、成分の重複や相互作用にも注意が必要になります。開始前に、かかりつけの医師や薬剤師へ製品名を伝えてご確認ください。
内科を受診すべき判断基準とクリニックで受けられる検査
「要再検査・要精密検査」の通知が出た場合の相談タイミング
迷ったときの目安はシンプルです。結果票に「要再検査」「要精密検査」「要医療」の記載があれば、自己判断で様子を見ず、結果票を持って内科へご相談ください2。前年より数値が明らかに動いている場合、親やきょうだいに高血圧や糖尿病の方がいる場合も、早めの相談が役立ちます。
受診の際に前年までの結果をまとめてお持ちいただくと、変化の傾向を踏まえたご説明がしやすくなります。生活習慣の見直しで対応する段階なのか、治療の検討が必要な段階なのかを整理できる点が、相談の大きな意味です3。
血管脈波検査や心電図検査で把握する動脈硬化と心臓の状態
当院では、血管脈波検査で血管の硬さや詰まりの傾向を、心電図検査で心臓のリズムや負担の様子を確認できる体制を整えています。数値だけでは見えにくい身体の状態を客観的な指標として共有し、ご本人が納得したうえで次の一歩を選べるようにすることを大切にしています。
当院は内科・小児科・ペインクリニック内科・整形外科を標榜し、高血圧や糖尿病、肥満症といった生活習慣病から痛みのご相談まで幅広く対応しています。院長挨拶でもお伝えしている通り、治療法は患者様のご意向と推奨される方法を合わせ、一緒に考える姿勢が基本です。なお、健康診断と保険診療は保険制度上、同日には実施しておりません。別日でのご来院をお願いいたします。
よくある質問
Q1. 40代で受けておいた方がよい検査には何がありますか。
A. 職場健診や特定健診で確認する血圧、血糖、脂質、肝機能に加え、必要に応じて心電図検査や血管脈波検査、各種がん検診の受診が挙げられます。人間ドックを活用する方法もあります。ご家族の病歴やお困りの症状によって優先度が変わりますので、内科でご相談ください。
Q2. 40代に勧められる運動習慣の目安はどのくらいですか。
A. 息が弾む程度の中強度の活動を日常的に取り入れ、週の合計で一定量を確保する考え方が一般的です。まとめて行う必要はなく、階段利用や早歩きを10分単位で積み重ねる形でも構いません。関節に不安がある場合は無理のない範囲で行ってください。
Q3. 食生活の改善は何から始めるとよいでしょうか。
A. すべてを変えようとせず、1つに絞ることをおすすめします。汁物を1日1杯までにする、夜の主食を軽くする、野菜や海藻を先に食べるなど、続けられる項目から始めると定着しやすくなります。
Q4. 数値が少し高いだけでも受診した方がよいですか。
A. 結果票に再検査や精密検査の指示がある場合は、症状がなくてもご相談ください。指示がない場合でも、前年より上がり続けている項目があるときは一度確認しておくと、今後の方針を立てやすくなります。
Q5. 受診するとすぐに薬を飲むことになりますか。
A. 数値の程度や他の要因を踏まえて判断するため、生活習慣の見直しから始める場合も少なくありません。方針は患者様のご意向を伺いながら一緒に検討していきます。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 厚生労働省(政策・健康情報の入口) https://www.mhlw.go.jp/
3. 日本医師会 https://www.med.or.jp/
藤田保健衛生大学 麻酔・周術期管理医学講座
大同病院 麻酔科部長を経て、2023年うえの台いたみと内科のクリニック開設
上記の他に、日本ペインクリニック学会指定研修施設、内科・小児科・皮膚科・ペインクリニック医院に非常勤医師として勤務
日本専門医機構認定 麻酔科専門医
日本麻酔科学会認定 麻酔科指導医
厚生労働省 麻酔科標榜許可(麻酔科標榜医)
厚生労働省 緩和ケア研修修了医
日本臨床栄養代謝学会 TNT研修修了医
臨床研修指導医
【所属学会】
日本麻酔科学会
日本臨床麻酔学会
日本ペインクリニック学会
日本疼痛漢方研究会
日本臨床栄養代謝学会
