
健康診断で「血糖値が高め」と言われたまま数ヶ月経っていませんか
自覚症状がないと、糖尿病予備群の指摘はどうしても後回しになりがちです。けれど症状のない時期にも、血管への負担は静かに積み重なっていくと考えられています。この記事では体内で進む変化と、忙しい毎日でも続けやすい食事・運動の工夫、内科へ相談する目安を整理します。
この記事の要点まとめ
- 糖尿病予備群は自覚症状が乏しくても、血管に負担が積み重なる可能性が指摘されています
- 食べる順番の工夫や食後の軽い歩行など、無理なく続けられる生活調整が挙げられます
- 数値の変化や指摘が続く場合は、内科での血液検査や相談が一つの目安となります
糖尿病予備群の放置で起こる身体の変化と将来のリスク
糖尿病予備群は「境界型糖尿病」とも呼ばれます。健康診断でいえば、空腹時血糖値110〜125mg/dL、HbA1c6.0〜6.4%あたりが一つの目安4。正常域でもなく糖尿病でもない、いわば中間地帯にあたります。
自覚症状がない時期に血管で進む影響と進行メカニズム
この段階では、喉の渇きや体重減少といった分かりやすいサインはほとんど現れません。それでも体の内側では、インスリンの働きが鈍くなるインスリン抵抗性が少しずつ進んでいる場合があるとされています1。
見落としたくないのが、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」です。空腹時の数値が基準内におさまっていても、食後だけ大きく跳ね上がる方は決して珍しくありません。急な血糖の変動は血管の内側を覆う細胞に負担をかけ、動脈硬化の進行に関わると考えられています4。健診の空腹時採血だけでは、この変動を捉えきれない点にも注意が必要です。
本格的な糖尿病へ移行する期間の目安と発症リスク
予備群からどれくらいの期間で糖尿病へ移行するかは、個人差がかなり大きいところ。ただ国内外の調査では年間で数%程度が糖尿病域へ進むという報告があり、数年単位で見れば小さい割合とは言えません4。一方で、生活習慣の見直しに取り組んだ群では糖尿病域への移行が少なかったとする報告もあり、この時期の過ごし方が持つ意味は大きいと考えられています1。
家族に糖尿病の方がいる場合、体質的に血糖が上がりやすい傾向が知られています。遺伝的な背景そのものは変えられませんが、だからこそ生活面の工夫と定期的な数値の確認が意味を持ちます。糖尿病が進行すると網膜症・腎症・神経障害の三大合併症に加え、心筋梗塞や脳梗塞といった大血管の障害にも関わってくるため、予備群のうちに動き出す意義は小さくありません3。
予備群に関するよくある誤解とトクホ・サプリメントの捉え方

「症状がないからまだ問題ない」という誤解の見直し
診察室でよく耳にするのは「どこも痛くないし、体調も普通なので」というお声です。しかし血糖に関する変化は、体感として表に出てくるまでにかなりの時間差があります。症状の有無と、体内で進んでいる状態は必ずしも一致しません1。
痛みがないから受診しない、という判断は自然な感覚でもあります。ただ、数値という客観的な指標を定期的に見ておくことで、変化に早く気づける場面が増えます。当院のトピックスでも「自覚症状がないから大丈夫」という受け取り方に潜む注意点をお伝えしてきました。年に一度の健診に加え、指摘を受けた方には数ヶ月おきの数値確認をご検討いただきたいところです。
サプリメントやトクホだけに頼る自己判断の懸念点
「血糖値が気になる方へ」と書かれた特定保健用食品やサプリメントを試している、という方も多くいらっしゃいます。こうした製品は食生活を補助する位置づけであり、生活習慣の見直しと併せて考えるものです2。
気をつけたいのは、製品を使っていること自体で気持ちが落ち着いてしまい、本来必要な食事や運動の調整、医療機関での確認が後回しになるパターン。すでに他のお薬を服用中の方では、飲み合わせへの配慮が必要な場合もあります。自己判断で選択肢を増やしていくより、今の数値と体の状態を医師と共有したうえで何から手をつけるかを一緒に整理するほうが、遠回りになりにくいでしょう3。
忙しい40代でも無理なく継続できる生活習慣の工夫
仕事が立て込む世代に厳しい制限を課しても、まず続きません。日本糖尿病学会も、無理のない範囲で継続できる生活調整の重要性を示しています4。ここでは取り入れやすい工夫を挙げていきます。
食べる順番の意識と無理のない食事バランスの改善
最初の一歩としてお伝えしやすいのが食べる順番の工夫。野菜や海藻、きのこなど食物繊維を含むものから箸をつけ、次に肉・魚・大豆製品、最後にごはんやパンへ進むと、食後の血糖の上がり方が緩やかになりやすいとされています1。
コンビニ利用が多い方なら、カップの味噌汁やサラダ、ゆで卵、サラダチキンを一品足すだけでも構成が変わります。麺類だけ、丼だけという単品完結を避けるのがポイントです。糖質をほぼゼロにするような極端な制限は長続きしにくく、体調面でも配慮が必要になります。白米を雑穀入りに変える、大盛りをやめる。そんな小さな調整から始めるほうが現実的でしょう。夜遅い食事が続く時期は、夕方に軽く何かを口にして帰宅後の量を抑える方法もあります。
隙間時間で取り組める運動と日常での活動量アップ
運動はまとまった時間を確保しようとすると、それ自体がハードルになってしまいます。食後15分ほどの軽い歩行でも、食後の血糖の上がり方が穏やかになりやすいと考えられています1。昼食後に少し遠回りして戻る、通勤で一駅分歩く。そんな形で日常に埋め込むのがコツです。
階段を使う、デスクワークの合間に立ち上がって伸びをする。細切れの動きも積み重なれば活動量になります。有酸素運動にスクワットなど下肢の筋トレを週2回ほど組み合わせることは、筋肉での糖の利用にも関わるとされています。体重が気になる方は、現体重の5〜7%の減量が一つの目安として挙げられています4。80kgの方なら4〜5kg程度。半年かけて取り組めば十分に射程内です。睡眠不足やストレスも血糖の調節に影響するとされるため、休息を確保することも大切な要素になります。
内科クリニックで受ける生活指導と相談の目安
どのようなタイミングで受診を検討すべきかという基準
健診結果に「要指導」「要再検査」の記載があれば、それが相談のきっかけと受け取っていただいて構いません。数値でいえば、空腹時血糖値110mg/dL以上、あるいはHbA1c6.0%以上が続いている場合が目安になります4。
前回より数値が上がってきた、家族に糖尿病の方がいる、体重が増加傾向にある。こうした条件が重なる方は、早めの確認をご検討ください。生活習慣の見直しに取り組んで3〜6ヶ月ほど経っても数値が横ばい、という場合も相談に向いたタイミングです。費用面では、健診の指摘に基づく再検査や生活習慣病の管理は保険診療の対象となるのが一般的で、想像より負担が限られるケースも少なくありません2。
クリニックでの血液検査と個別に合わせた生活サポート
当院の内科では、高血圧・肥満症・糖尿病などの生活習慣病に対応しています。院長挨拶でもお伝えしているとおり、生活習慣に関するお悩みをいつでもご相談いただける体制を整えています。血液検査でHbA1cや血糖値、脂質や腎機能の項目を確認し、現在の状態を数値で共有していきます。
さらに当院では血管脈波検査や心電図検査装置、超音波診断装置を備えており、血管の状態や心臓への負担についても併せて確認できます。血糖の話は血圧や脂質と切り離せないため、全体像を見ながら整理していく形をとっています。
生活指導では、勤務形態や食事のタイミング、外食の頻度をうかがったうえで、続けられそうな範囲を一緒に決めていきます。当院は治療法の選択にあたり、患者様のご意向と推奨される方法を並べて考える方針を大切にしており、生活習慣の見直しについても同じ姿勢で向き合います3。
なお、保険診療の規定により、当院では健康診断と保険診療を同日に実施しておりません。健診をご希望の場合は、別日でのご来院をお願いしております。
よくある質問
Q1. 糖尿病予備群を放置するとどうなりますか。
A. 自覚症状がないまま経過することが多い一方で、体内では食後の血糖変動などにより血管への負担が積み重なる可能性が指摘されています。時間の経過とともに糖尿病域へ移行される方も一定数いらっしゃるため、数値の定期的な確認と生活習慣の見直しをご検討ください。
Q2. 予備群と言われましたが、どの程度深刻に受け止めるべきでしょうか。
A. 過度に不安を抱える必要はありませんが、そのままにしておくのも避けたい段階です。予備群は生活習慣の調整に取り組む余地が残されている時期とされています。まずは現状を数値で把握するところから始めましょう。
Q3. 予備群と言われたら、まず何をすればよいですか。
A. 健診結果をお持ちのうえ内科を受診し、血液検査で今の状態を確認するのが出発点です。そこから、食べる順番の工夫や食後の軽い歩行など、続けられる方法を医師と相談しながら決めていくと無理がありません。
Q4. 通院はどのくらいの頻度になりますか。
A. 状態によって異なりますが、経過を見る目的であれば2〜3ヶ月ごとの血液検査が一つの目安になります。お仕事のご都合も含めてご相談ください。
Q5. 市販のサプリメントやトクホを使っても構いませんか。
A. 食生活を補助する位置づけの製品であり、それだけで対応を完結させるのは避けたいところです。服用中のお薬がある方は、事前に医師へお伝えください。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 厚生労働省(政策・健康情報の入口) https://www.mhlw.go.jp/
3. 日本内科学会 https://www.naika.or.jp/
4. 一般社団法人 日本糖尿病学会 https://www.jds.or.jp/
藤田保健衛生大学 麻酔・周術期管理医学講座
大同病院 麻酔科部長を経て、2023年うえの台いたみと内科のクリニック開設
上記の他に、日本ペインクリニック学会指定研修施設、内科・小児科・皮膚科・ペインクリニック医院に非常勤医師として勤務
日本専門医機構認定 麻酔科専門医
日本麻酔科学会認定 麻酔科指導医
厚生労働省 麻酔科標榜許可(麻酔科標榜医)
厚生労働省 緩和ケア研修修了医
日本臨床栄養代謝学会 TNT研修修了医
臨床研修指導医
【所属学会】
日本麻酔科学会
日本臨床麻酔学会
日本ペインクリニック学会
日本疼痛漢方研究会
日本臨床栄養代謝学会
