
健康診断の「H」「L」が気になったときに確認したいこと
職場の健診結果が届き、血液検査欄に並ぶ「H」「L」の記号を前に手が止まった——そんな方は少なくありません。意味がわからないままでは、どこまで気にかけるべきか迷ってしまうもの。この記事では記号の読み方、主要項目の基準値の考え方、そして医療機関へご相談いただく目安を順に整理します。
この記事の要点まとめ
- 「H」「L」は統計的な基準値からの外れを示す印であり、健康な方でも一定の割合で表示される点を紹介
- 肝機能・脂質・血糖・血球など主要項目の見方と、食事や運動による一時的な変動要因を整理
- 「要再検査」「要精密検査」の記載時は自覚症状の有無に関わらず内科等への相談が目安になることを説明
血液検査結果にある「H」と「L」は何を意味するのか?

「H(High)」と「L(Low)」の基礎知識と基準値の捉え方
「H」は High の頭文字で、基準値より高い側にあることを示す印。「L」は Low、つまり基準値より低い側という意味です。ここで押さえておきたいのが、基準値そのものの成り立ち。基準値は「健康な方の検査値を集め、そのおよそ95%が収まる範囲」として統計的に定められた目安であり、病気の有無を線引きする境界線ではないと考えられています。
計算上は、健康な方でも20人に1人ほどは基準範囲から外れます。記号が付いていることと、体に不調があることは同じ意味ではないわけです。ただし外れ方の程度や複数項目の組み合わせによっては、あらためて確認しておきたい場合もあります。血液の各成分は互いに関連しながら全身の状態を映すもの。単独の数値だけで判断しない姿勢が大切とされています1。
前日の食事や運動が検査数値に与える一時的な影響
血液検査の数値には、直前の生活状況に左右されやすい項目があります。代表格は中性脂肪と血糖。前日の夕食が遅くなった朝や、飲酒の翌朝に採血した場合には、普段より高い側へ動きやすくなるとされます。γ-GTPもアルコールの影響を受けやすい項目のひとつ。
さらに、採血前に激しい運動をすると筋肉由来の酵素であるCK(クレアチンキナーゼ)やASTが上がることがあり、水分摂取が少ないと血液が濃縮されて赤血球やヘモグロビンが高めに出る場合もあります。健診の案内に「前日21時以降の食事はお控えください」といった指示があるのは、こうした変動要因をそろえる狙いから。指示どおりにいかなかったときは、その旨を問診でお伝えいただくと解釈の手がかりになります。
性別や加齢に伴う基準値の変動と個人の傾向
基準値は一律ではなく、性別で分けて設定されている項目もあります。たとえばヘモグロビンは男性で概ね13.7〜16.8g/dL、女性で11.6〜14.8g/dL程度と幅が異なり、尿酸値も男性のほうが高めの範囲で示されるのが一般的。血清クレアチニンも筋肉量の違いから男女で差が設けられています。
年齢による変化も見逃せません。加齢とともに腎機能の指標であるeGFRは緩やかに下がる傾向が報告されており、女性は閉経前後でLDLコレステロールが上がりやすいとも指摘されています。だからこそ、同じ数値でも一度の結果より「前年からどう動いたか」という推移のほうが多くの情報を含みます。過去の結果票は手元に残しておき、経年変化として見返す習慣をおすすめします。
注意すべき主要な血液検査項目と数値変動の背景
血液検査は大きく、酵素や脂質などを測る生化学検査と、赤血球・白血球などを数える血球検査(血液一般検査)に分けられます。ここでは生活習慣病と関わりの深い項目を中心にみていきましょう。
肝機能関連(AST・ALT・γ-GTP)の数値の見方
AST(GOT)とALT(GPT)は肝細胞に多く含まれる酵素で、いずれも基準値は概ね30U/L以下が目安。細胞が傷むと血液中へ漏れ出るため、数値の上昇は肝臓に負担がかかっている可能性を示す手がかりのひとつになります。ALTが単独で高めのときは脂肪肝との関連が語られることが多く、体重の増加傾向と重なるケースもみられます。
γ-GTPはアルコールや一部の薬剤、胆道の状態を反映しやすい項目。飲酒量が多い時期に高めに出ることがある一方で、飲酒習慣のない方でも上がる場合があります。原因を決めつけず、順に確認していく流れが一般的です。
脂質代謝(コレステロール・中性脂肪)の判定と生活習慣
脂質の項目では、LDLコレステロール(140mg/dL以上でH表示となることが多い)、HDLコレステロール(40mg/dL未満でL表示)、中性脂肪(150mg/dL以上)が基本の三点。LDLは食事中の飽和脂肪酸や体質の影響を受けやすく、中性脂肪は糖質や飲酒、食事直後の採血で動きやすい性質があるとされています。
HDLについては、運動習慣や喫煙状況との関連が指摘されています。交代勤務で食事時間が不規則になりやすい方では、脂質と血糖が同時に基準から外れることも珍しくありません。
糖代謝(空腹時血糖・HbA1c)の変化と注意すべきサイン
空腹時血糖は採血した時点の血糖を示し、100mg/dL以上で「やや高め」、126mg/dL以上では詳しい確認が望まれる水準とされます。対してHbA1cは過去1〜2ヶ月の血糖の平均的な状態を反映する指標で、直前の食事に左右されにくい点が特徴。基準値の目安は概ね5.6%未満で、6.5%以上になると糖代謝の詳しい評価が検討されます。
この二つを並べて眺めると、一時的な変動なのか持続的な傾向なのかを見分ける手助けになります。喉の渇き、夜間のトイレの回数、体重の変化といった自覚を伴う場合は、数値と併せて医師へお伝えください。
血球・貧血関連項目(赤血球・白血球・ヘモグロビン)の意義
ヘモグロビンや赤血球の減少は貧血の傾向を示し、疲れやすさや息切れといった自覚と重なることがあります。男性でヘモグロビンが基準を下回る場合は、鉄の不足以外の背景も含めて確認していくのが一般的。白血球数は炎症反応や感染、喫煙などで変動し、CRPと合わせて評価される項目です。
これら血球系の項目は、白血球の種類の内訳(血液像)や血小板数と併せて総合的に読み解く必要があり、専門的な評価が求められる領域でもあります1。MCV(赤血球の大きさ)など付随する数値も、原因を絞り込む手がかりとして活用されます。
再検査や医療機関への受診を検討する際の判断基準と診療科ガイド
要再検査・要精密検査の判定が出た場合の行動基準
健診結果には項目ごとの記号だけでなく、総合判定として「異常なし」「経過観察」「要再検査」「要精密検査」といった区分も記載されています。経過観察は次回健診まで生活面を見直しながら様子をみる区分、要再検査は同じ検査をもう一度行って一時的な変動かどうかを確かめる区分、要精密検査はさらに詳しい検査で背景を調べる区分という違いがあります。
見落とされやすいのは、自覚がないまま数値だけが動いているケース。肝機能や脂質、血糖の項目は初期の段階で症状が出にくく、記号が付いていても普段どおり過ごせることが多いのです。だからこそ、判定に「再検査」「精密検査」の記載があれば、体調に関わらず一度ご相談いただく姿勢が望まれます。結果票に有効期限があるわけではありませんが、時間が経つほど当時の状態と見合わせることが難しくなります。
相談すべき診療科(内科など)の選び方と具体的な基準
どの科を訪ねればよいか迷ったときは、まず内科で結果票を見せながら相談するのが現実的な第一歩です。血液検査は複数の項目が互いに関連するため、全体を俯瞰して優先順位を整理する役割を内科が担います。そのうえで、糖代謝やホルモン、電解質・甲状腺機能に関わる内容であれば内分泌内科、肝臓や胆道であれば消化器内科、脂質や血圧と心血管の関わりであれば循環器内科、血球系の詳しい評価が必要であれば血液内科へ——といった連携の流れが一般的です1。腫瘍マーカーの数値について説明を受けたい場合も、まずは内科で位置づけをうかがっておくとよいでしょう。
当院は内科を標榜し、高血圧、肥満症、糖尿病などの生活習慣病にも対応しております。院長挨拶でもお伝えしているとおり、生活習慣病をはじめとした健康上のお悩みについてはいつでもお気軽にご相談くださいという姿勢で診療にあたっています。
多忙な日々の中でも無理なく受診するための準備
交代勤務や子育てで時間の確保が難しい方は、受診前のひと手間で相談の時間を有効に使えます。ご持参をおすすめしたいのは、今年の健診結果票、できれば過去数年分の結果、そして服用中の薬やサプリメントの情報。加えて、勤務が日勤と夜勤で入れ替わること、食事の時間帯、飲酒の頻度といった生活リズムをメモにしておくと、数値の背景を一緒に考えやすくなります。
当院では血管脈波検査や心電図検査装置、超音波診断装置などを備え、血液検査の数値と併せて全身の状態を確認できる体制を整えております。WEB予約システムも患者様に無料でご利用いただけますので、勤務の合間に予約を調整いただけます。なお保険診療の規定により、健康診断と保険診療は同日には実施しておりません。健康診断をご希望の場合は、保険診療とは別の日にご来院ください。
よくある質問
Q1. 「H」や「L」が付いていても症状がなければ様子をみてよいのでしょうか。
A. 総合判定が「経過観察」であれば、生活面を見直しつつ次回健診で推移を確認する流れが一般的です。ただし「要再検査」「要精密検査」の記載がある場合は、自覚の有無に関わらず一度医療機関でご相談いただくことをおすすめします。判断に迷うときは、結果票をお持ちのうえ内科へお問い合わせください。
Q2. 前日にお酒を飲んでしまいました。数値は当てになりませんか。
A. γ-GTPや中性脂肪、血糖などは直前の飲食で動きやすい項目です。数値がまったく無意味になるわけではありませんが、解釈が変わる場合はあります。受診の際に飲酒や食事のタイミングをお伝えいただくと、一時的な変動かどうかを整理する手がかりになります。
Q3. 血液検査を医療機関で受けるときの費用はどのくらいですか。
A. 保険診療で医師が必要と判断して実施する場合、項目数によりますが3割負担で数百円から数千円程度が目安です。人間ドックや自費の検査は全額自己負担となり、内容によって幅があります。金額は項目構成で変わるため、事前にお問い合わせいただければご案内いたします。
Q4. 健康診断と一緒に、気になる症状の相談もできますか。
A. 保険診療の規定により、健康診断と保険診療は同日に実施しておりません。症状のご相談は保険診療となりますので、健康診断とは別の日にご来院いただくようお願いしております。
Q5. 過去の健診結果は取っておいたほうがよいですか。
A. はい、保管をおすすめします。一度の数値より、数年分の推移のほうが多くの情報を含みます。紙で残しにくい場合は、写真に撮っておく方法でも十分役立ちます。
参考文献
1. 一般社団法人 日本血液学会. https://www.jshem.or.jp/
藤田保健衛生大学 麻酔・周術期管理医学講座
大同病院 麻酔科部長を経て、2023年うえの台いたみと内科のクリニック開設
上記の他に、日本ペインクリニック学会指定研修施設、内科・小児科・皮膚科・ペインクリニック医院に非常勤医師として勤務
日本専門医機構認定 麻酔科専門医
日本麻酔科学会認定 麻酔科指導医
厚生労働省 麻酔科標榜許可(麻酔科標榜医)
厚生労働省 緩和ケア研修修了医
日本臨床栄養代謝学会 TNT研修修了医
臨床研修指導医
【所属学会】
日本麻酔科学会
日本臨床麻酔学会
日本ペインクリニック学会
日本疼痛漢方研究会
日本臨床栄養代謝学会
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