
尿や口の乾きと活気を普段の様子と照らして確認する
子どもの脱水が疑われるときは、「少し飲めた」「少し遊べた」という一場面だけで判断しないことが大切です。おしっこの回数や口の乾き、涙の有無、全身の活気を普段の様子と照らしてまとめて観察することが、受診の目安になります12。
この記事では、家でたしかめたい体のサインや、吐いたときの経口補水液の飲ませ方、病院に相談する前にまとめておきたい経過についてお伝えします。
この記事の要点まとめ
- おしっこの回数や色、口の乾き、涙、手足の冷たさ、呼びかけへの反応を、ふだんの様子と照らして見ます。
- 吐いたあとは経口補水液を少しずつ飲ませ、おしっこや口のうるおい、元気さの変化を見守ります。
- 水分がとれない、吐き続ける、反応がとぼしいときは、これまでの様子をまとめて医療機関へ相談します。
少し遊べていても、尿・口の乾き・涙・活気を合わせて見る

子どもの脱水を見分けるときは、おしっこや口の乾き、涙、手足の冷たさ、元気さといったいくつかの変化を重ねて確かめます。子どもは大人よりも体の水分の出入りが大きく、赤ちゃんほど様子が変わりやすいためです。診察では「どれだけ飲めて、どれだけ出ているか」という流れが手がかりになり、飲む量やおしっこの量が減っておらず、吐いてもいなければ、重い脱水の心配は少ないとされています1。
尿の回数・色とおむつのぬれ方は「最後にしっかり出た時刻」から振り返る
体内の水分が足りているかを知る手がかりになるのが、おしっこの回数と量です1。普段と比べて回数が減っていないか、色が濃くなっていないか、おむつの重さやぬれ方がどうかを振り返ります。
トイレの練習中でおむつとトイレに排尿が分かれる時期は、両方を含めて「最後に十分な量が出た時刻」を確かめ直してみてください。水分を受けつけない、おしっこが半日ほど出ないといった様子は、受診を考える目安のひとつとされています3。ただし、その時間まで待ってよいという意味ではなく、普段より尿が減ってきた段階で医療機関への相談を考える材料にします。
口・唇・舌の乾き、泣いても涙が少ない、目のくぼみや手足の冷たさ
おしっこの変化とあわせて、顔まわりや皮膚の湿り気、血の巡りも観察します2。家庭で確認したい主な項目は次のとおりです。
- 口や舌の湿り気:唇の皮むけだけでなく、舌の表面や口の中が乾いていないか、脇の下に湿り気があるか
- 涙と目元の様子:泣いたときに涙が出ているか、目のまわりがくぼんで見えないか(乳児では頭のてっぺんにある大泉門のへこみも確認)
- 手足の温度と顔色:手足が冷たくなっていないか、顔色や唇の色が青白くないか、皮膚のハリが落ちていないか
発熱中は口呼吸になりやすく、熱の影響だけでも唇は乾きます。また、体の水分が減って血液の巡りが変化すると、手足の先が冷たくなることがあります。1つの症状だけで判断せず、尿や元気さと合わせて見ることが大切です12。
動画で笑う瞬間があっても、呼びかけへの反応と抱っこの求め方を見る
お気に入りの動画を見て笑う瞬間があっても、それだけで水分が足りているとは限りません。少し遊んだあとにすぐ横になる、抱っこを求め続ける、呼びかけへの反応が鈍い、うとうと眠りがちといった変化が続くこともあります2。
「さっき少し笑ったから」「一口飲めたから」という一瞬だけで切り取らず、半日の流れの中で普段の活気や機嫌と照らし合わせてみてください。小さなお子様は症状を自分で十分に伝えられないため、当院では訴えのある部位だけでなくお子様の全身をしっかり診て、総合的に判断させていただいております。
祖母や預け先から引き継ぐ観察項目と、体重の数字の扱い方
日中に家族や預け先へお子様を頼むと、「少し飲めた」「元気そうだった」という受け止め方に違いが出ることがあります。引き継ぐ際は、次の項目を時刻とともにメモで共有しておくと経過を追いやすくなります1。
| 確認したい項目 | メモに残す内容の例 |
|---|---|
| 水分と嘔吐の記録 | 飲んだ種類・量と時刻、吐いた回数と時刻 |
| 排尿の記録 | トイレ・おむつそれぞれの回数、最後にしっかり出た時刻 |
| 体のサインと活気 | 泣いたときの涙、口の乾き、体温、呼びかけへの反応 |
脱水が重くなると、ショックのような様子が見られたり、体重の1割をこえる水分が失われたりします。こうした重い脱水のときや、口から飲む方法でよくならないときは、入院して点滴を受けることがすすめられています1。ただし、家の体重計では服や食事、排せつの前後で数字が動きやすいため、体重の数字だけで脱水の程度を決めないようにしてください。
嘔吐があるときは脱水予防を考え、飲めない場合は受診へつなぐ
発熱や嘔吐が重なるときは、吐くのを恐れて水分を控えすぎるのではなく、少量ずつ水分と塩分を補いながら受診のタイミングを計ります12。急性胃腸炎などでは、経口補水液でできるだけ早く水分を補うことが治療の中心とされています2。口から補えない状態が続くときは、病院で点滴などを考えます1。
吐くのが怖くて水分を控える前に、経口補水液を少量ずつ試す
嘔吐した直後は胃腸が刺激されているため、少し様子を見て落ち着くのを待ちます。その後は時間をおきすぎず、ティースプーン1杯やペットボトルのキャップ1杯ほどの経口補水液から水分補給を始め、吐かなければ少しずつ量や間隔を広げていきます。
喉が渇いているからと一度にたくさん飲ませると、胃が驚いて再び吐きやすくなります。反対に、吐くのが心配で水分を控えすぎると、体内の水分と電解質(塩分など)が不足していきます。始める量や増やし方の目安はお子様の年齢や体重、持病の有無によって異なるため、具体的な飲ませ方は医師や薬剤師にご確認ください。
飲ませた後に尿と活気が戻るかを見て、家庭対応を続けるか判断する
水分を少しずつ与えたあとは、1〜2時間おきを目安におしっこが出るか、口の中の湿り気や涙が戻るか、視線や反応が普段に近づくかを確かめます。
もし少量ずつ飲ませても繰り返し吐いてしまう、水分をまったく口にしようとしないといった場合は、家庭での水分補給を続けず医療機関への受診へ切り替えてください。おしっこが出ない状態が続く、ぐったりして反応が乏しいといったときも同じです。下痢と嘔吐が重なっているときも体の水分が失われやすいため、おしっこが半日ほど出ないといった目安を待たずに、早めに相談しましょう。
当院での胃腸炎の診療と、点滴を検討する場面の考え方
当院では胃腸炎のとき、症状をやわらげることと脱水を防ぐことを中心に、体を休めながら水分をとるようすすめ、必要なときは点滴などを行っております。ウイルスによる病気では、症状をやわらげる治療を中心にご説明しています。解熱剤も熱があるだけで使うのではなく、高い熱やつらさが強いときなど、体全体の様子を見て使います。
点滴は、水分がとれずぐったりしているなど、医師がお子様の全身状態を診たうえで必要性を判断するものであり、すべてのお子様に一律で行うものではありません2。当日の対応や処置については、受診時または来院前のお電話でご確認ください。費用は、お子様の年齢や自治体の子ども医療費助成、処置の内容によって変わります。
東海市の当院へ相談する前に整理したい経過と、急ぐ場面の使い分け
お子様の様子によって、診療時間内に受診するか、急いで動くかを分けて考えます。呼びかけに反応しない、けいれんが止まらない、息が苦しそうで顔や唇の色が紫っぽいときは、診療時間を待たずに救急車(119番)を呼ぶか、救急の窓口へ向かうことを考えてください。生後3か月未満の赤ちゃんの発熱や、持病のあるお子様は早めに受診し、夜や休みの日に迷うときは、小児科の医師や看護師に電話で相談できる子ども医療電話相談(#8000)も使えます。
東海市にある当院へご相談いただく際は、発熱のある方には来院前にお電話でのご連絡をお願いしております。お電話や診察の際には、次の経過を整理してお伝えいただくと状態の把握がスムーズです1。
- 発熱や嘔吐・下痢が始まった時刻と、これまでの回数
- 水分を飲めた量と時刻(何をどのくらい飲んだか)
- 最後に十分な量のおしっこが出た時刻と、普段との違い
- 泣いたときの涙、口の乾き、呼びかけへの反応や活気の変化
- 現在の体温、持病の有無、普段飲んでいるお薬
当院はVドラッグ様と共用の大型駐車場を備えており、お車でもご来院いただけます。診療時間や休診日はアクセスページでご確認のうえ、お子様の様子で気がかりな点があればご相談ください。
よくある質問
Q. 小児の脱水では病院でどのような検査をしますか?血液検査は必要ですか?
A. 脱水かどうかは、水分がどれだけとれて、おしっこがどれだけ出ているかという経過のききとりと、体全体の診察で見ていくのが基本です12。軽い胃腸炎などで経過がはっきりしているときは、かならずしも特別な検査がいるとは限りません12。ただし、水分がとれず点滴を考えるときや、体の中の塩分(電解質)や血糖、腎臓のはたらきなどをくわしく確かめたいときは、医師の判断で血液検査や尿検査を行うことがあります。
Q. 脱水症で嘔吐や立ちくらみ(めまい)が起きるのはなぜですか?
A. 子どもの嘔吐は、胃腸炎などのウイルス感染で起こることが多く、そこから脱水に進むことがあります。一方で、体の水分や塩分が大きく失われると、血液の巡りや体内の電解質のバランスが乱れ、気持ち悪さや嘔吐、立ちくらみ(めまい)、手足の冷たさなどにつながることがあります。立ち上がれないほどのふらつきがある場合や、水分をとるたびに吐いてしまう場合は、早めに医療機関へご相談ください。
Q. 発熱とけいれんが起きたときは、脱水よりも救急車を優先すべきですか?
A. けいれんが起きた場合は、水分を飲ませようとせず、まずはまわりに硬い物がない平らな場所で横向きに寝かせて様子を観察してください。けいれんしている最中に飲み物を与えると、気道に詰まるおそれがあります。けいれんが5分以上続く、止まっても意識が戻らない、1日のうちに何度もくり返すといったときは、迷わず救急車(119番)を呼ぶ目安になります。
参考文献
1. Hartman S, Brown E, Loomis E et al. Gastroenteritis in Children. American family physician. 2019. PMID: 30702253
2. Guarino A, Ashkenazi S, Gendrel D et al. European Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition/European Society for Pediatric Infectious Diseases evidence-based guidelines for the management of acute gastroenteritis in children in Europe: update 2014. Journal of pediatric gastroenterology and nutrition. 2014. PMID: 24739189, DOI: 10.1097/MPG.0000000000000375
3. こどもの発熱等で受診に悩んだときは – 子育て情報サイト – 水戸市ホームページ. https://www.city.mito.lg.jp/site/kosodate/41928.html
4. Aynsley-Green A, Pickering D. Use of central and peripheral temperature measurements in care of the critically ill child. Archives of disease in childhood. 1974. PMID: 4212503, DOI: 10.1136/adc.49.6.477
藤田保健衛生大学 麻酔・周術期管理医学講座
大同病院 麻酔科部長を経て、2023年うえの台いたみと内科のクリニック開設
上記の他に、日本ペインクリニック学会指定研修施設、内科・小児科・皮膚科・ペインクリニック医院に非常勤医師として勤務
日本専門医機構認定 麻酔科専門医
日本麻酔科学会認定 麻酔科指導医
厚生労働省 麻酔科標榜許可(麻酔科標榜医)
厚生労働省 緩和ケア研修修了医
日本臨床栄養代謝学会 TNT研修修了医
臨床研修指導医
【所属学会】
日本麻酔科学会
日本臨床麻酔学会
日本ペインクリニック学会
日本疼痛漢方研究会
日本臨床栄養代謝学会
